法人向け生命保険商品の一つ「逆養老保険」を解約して戻ってきた約二億円を所得から除外し、法人税約六千万円を脱税したとして、名古屋国税局が法人税法違反の疑いで、金属加工機械メーカー「SEG」(名古屋市緑区)と屋嘉比(やかひ)淳一社長(56)=東京都渋谷区=を名古屋地検特捜部に告発したことが分かった。
関係者によるとSEGは二〇〇七~〇八年、節税効果があるとされる逆養老保険を、大手生命保険会社(東京都)と契約したが、一一年に契約者名義を屋嘉比社長に変更した上で解約。社長が保険会社から受け取った解約返戻金に相当する額を意図的に除外し、所得を圧縮したとされる。
逆養老保険の保険料は、一般的に法人の費用として扱われるため、節税効果があるとされる。ただ、途中で解約した場合、支払った保険料の総額などから算出される返戻金は、法人の所得として課税対象となる。
同社の代理人弁護士によると、保険は屋嘉比社長ら役員や従業員の計五人を被保険者として同社が契約。五人の退職金を確保する目的で受取人は死亡保険金が法人、満期保険金は被保険者としていたという。国税局は一三年秋、強制捜査(査察)に着手。契約者の名義を屋嘉比社長に変更した時点で、同社に解約返戻金に相当する利益が出たのに故意に隠したと判断したとみられる。返戻金は、社長の個人口座に入金されていた。
屋嘉比社長は「支払うべき税金を支払わなかったのは事実だ。申し訳ない」とコメント。生命保険については「途中解約した理由は、現段階では申し上げられない」とした。修正申告は既に済ませたという。
同社は一九五五年設立。従業員は約五十人で、自動車生産設備の設計、組み立てなどを手掛ける。名古屋市内に三カ所の工場があるほか、米国や中国に関連会社を展開している。