【ワシントン】米財務省は、一部企業が米国の税制を逃れるために行っている「インバージョン(税率の低い国への本拠地移転)」の阻止に向けた政府努力の一環として、議会承認が不要な方法を模索している。事情に詳しい2人の関係者が明らかにした。

関係者によると、このプロセスは初期段階で、実行までにはある程度時間がかかる可能性が高い。

アイルランドや英国、スイスなどの低い税率を利用しようと、多数の米企業がインバージョンを試みているか、すでにそうしている。米国の法人税率は高いが、数々の優遇税制措置があるため納税要件は一様ではない。企業は海外組織を再編成する(大抵の場合は海外企業を買収し、その母国や他の低税率国を本拠地とする)ことにより、さらに税金の支払いを抑えられる。過去3年間で20社以上の米企業が、そうしたインバージョンを実行したか、もしくは動き始めている。

この問題を担当している財務省高官らは、厳密にどのような税制改正がこうした最近の企業買収を促しているのか見極めつつ、同省の権限の及ぶ範囲について検討している。改革では、インバージョン対策として2004年に導入された内国歳入法7874条の施行方法が焦点となる可能性もある。

7874条は施行方法にやや曖昧な部分があるため、財務省と内国歳入庁(IRS)にはその実施においてある程度の柔軟性が与えられている。

財務省報道官は「議会の行動なしに財務省ができることには限度があり、インバージョンへ十分に対応するには法制化が唯一の道だ」と語った。「それでも財務省は、企業がインバージョンを行う余地を制限するため有効な行政措置や、インバージョンを実施しても実質的な恩恵が大幅に縮小するような方策により、部分的な解決策だけでも提示できるようさまざまな権限を見直している」とも述べた。

ホワイトハウスのアーネスト報道官は、こうした租税問題に関するオバマ政権の対応がどのようなものになり得るかについて言及しようとしなかった。

同報道官は「現時点で、何の可能性があり何の可能性がないか示す立場にはない」と話した。

オバマ大統領とルー財務長官は、税法上の欠陥が米企業の税金逃れを可能にしていると主張し、議会に対して、企業にこうした構造を利用させないよう呼びかけている。ルー長官は、財務省は議会の承認なしで行動する権限があまりないと公言している。