グローバル化が進み、人、物、情報、そしてカネは、国境を越えて、日々激しく行き来している。各国の制度の中には、そうした現状に十分に対応できていないものがある。税制はその一つだ。日本でも、富裕層が節税のために海外移住することは、珍しいことではなくなってきている。政府は7月より、いわゆる「出国税」を導入する構えだ。

日本では、株式の売却益に対して、所得税・住民税合わせて20%が課される(これに復興特別所得税が加わる)。一方、シンガポール、香港、ニュージーランド、スイスでは、株式の売却益は非課税だ。これらの国に移住した後に売却すれば、税金の支払いを回避することができる。財務省によると、これらの国に居住する日本人の数は、1996年には6722人だったところ、2013年には1万7千人以上となっていた。この中には税金対策目的の移住者が含まれていると考えられている。

 対策として、政府が導入を予定しているのは、出国時に保有する金融資産に対して、時価額をもとに、売却を行った場合と同等の課税を行う、というものだ。対象者は、出国時点で、保有する有価証券等の評価額が1億円以上で、直近10年のうち5年以上日本に居住していた人だ。5年以内に帰国した場合は、課税が取り消される。

 今国会に提出される税制改正法案が成立すれば、今年7月からの実施となる。